essay |
一念発起の家づくり |
土地探しから始まった私の「家づくり」も、無事上棟式を終え、いよいよ終盤を迎えました。ここまでくればもう大丈夫、とホットしていたのは束の間。家の骨組みができてからのち、今まで正直言って、私には全く見えていなかったこと(想像できていなかったこと)が次々と具体的に明らかになってくるなか、思惑違いの点に戸惑うことが度々ありました。これはもちろん、設計者であるSとの思い違いも多少ありますが、施工者との行き違いがあったり、私の気が変わったりなど、起因するところはいろいろとあります。思っていた以上にうまくいっているのなら問題はありませんが、逆の場合、工事が進行していくなか、黙っているわけにもいきません。 現場にいた大工さんに、変更できるか尋ねてみましたが、案の定、「図面通りやってんだよ…。」と渋い顔。そうです。図面通りやっていても文句があるときはあります。ましてや、図面通りできていない場合や、勝手に変えられる事だって、無きにしもあらず。私は、何気なく、たまたま現場にいた大工さんに声をかけてしまったのですが、次の言葉を捜せないまま、困ってしまいました。 でも、こんなときにこそ、頼りになるのがSの存在でした。小さなことから大きなトラブルまで、施主から施工者へ直接掛け合っても、なかなか解決しないことでも、あいだに入ってくれている設計者Sがいれば、うまく調整をしてくれるのです。設計者は、基本的には施主の味方ですから、このときは本当に心強く思いました。 外構工事はちょっぴり予定より遅れそうですが、建物の引渡しは予定通りに。というふうに、なんとか考えていた連休中の引越しに見通しが立ったので、そろそろ竣工祝いの日程を考えなくては。 新築の家のお披露目を兼ねた竣工祝いの席では、お世話になった大工さんをはじめとする各種職方のみなさんの苦労話も、振り返ってみれば良い思い出になります。職人さんが心を込めてつくってくれた家であればあるほど、末永く見守られていくものだと思いました 建物の竣工は「家づくり」のゴールであると同時に、新たなスタートでもあります。形としてできあがった家に、今度は私たち家族が、住み続けていくことによって、息を吹き込んでいくのです。(実際、予算の都合上、施工者=施主となってしまった宿題もたくさんあることだし…。ま、あせらずのんびり、休日を有意義に過ごせるとあきらめて、やっていくしかないかな。)もちろん設計者としてのSとは言うまでも無く、施工者との今後の関わりも、限りなく続くといっても過言ではないようです。 このように「住まい」とは、「あっ、これにしよう!」とお店に並んでいるものを買うように、手に入れるものではありません。そんなことをするからなおさら、「もう飽きちゃった!ちょっと古くなったし…。」と、いとも簡単に壊してしまえるような「家」だらけになってしまったとも言えるのではないでしょうか。 最後に、これを読んで、一念発起で家づくりを思い立った【あなた】に、決して楽して手に入れようとは考えず、なるべく苦労をするつもりで臨んでください。できあがる前にかけたエネルギーの分だけ、住み始めたあなたの生活に潤いが返ってくるはずです。「家づくり」は、だれでもないあなた自身の問題なのです。他人まかせでは、始まりません。 それにしても、施主・設計者・施工者などのネットワークの大切さをしみじみ考えさせられる私の家づくりでした。 |
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